第1章 Dartへようこそ

Dartとは何か

Dartは、Googleによって開発されたオープンソースのプログラミング言語です。主な特徴として:

  • 汎用プログラミング言語:Webアプリケーション、モバイルアプリ、デスクトップアプリ、サーバーサイドなど幅広い用途に対応
  • オブジェクト指向:クラスベースのオブジェクト指向プログラミングをサポート
  • 型安全:静的型付けと型推論を組み合わせた安全性の高い言語設計
  • Flutterとの統合:特にモバイル・Webアプリ開発フレームワーク「Flutter」の公式言語として広く使用

Dartの歴史と設計思想

歴史

  • 2011年10月:GoogleのLars BakとKasper Lundによって発表
  • 2013年11月:Dart 1.0リリース
  • 2018年8月:Dart 2.0リリース(型システムの大幅改善)
  • 2023年以降:Dart 3.0でnullセーフティが標準化、さらなる進化

設計思想

  1. 生産性の向上:開発者が素早くコードを書けることを重視
  2. 高速な実行:JITコンパイルとAOTコンパイルの両方に対応
  3. 学習しやすさ:既存の言語(Java、JavaScript、C#など)の良い部分を取り入れた親しみやすい構文
  4. スケーラビリティ:小規模から大規模プロジェクトまで対応

Dartの特徴と利点

主な特徴

1. ホットリロード対応

  • コードの変更を即座にアプリに反映
  • 開発サイクルが劇的に短縮

2. 強力な型システム

  • Nullセーフティによるnull参照エラーの防止
  • 型推論により冗長な型宣言を削減

3. 非同期プログラミング

  • async/await構文で直感的な非同期処理
  • Future、Streamなどの強力な非同期API

4. マルチプラットフォーム

  • 単一コードベースで複数のプラットフォームに対応
  • iOS、Android、Web、デスクトップアプリを開発可能

5. 豊富なライブラリ

  • pub.devに数万のパッケージが公開
  • 標準ライブラリも充実

利点

  • パフォーマンス:ネイティブコードへのコンパイルにより高速動作
  • 保守性:型安全性により大規模プロジェクトでもバグを減らせる
  • コミュニティ:Flutterの人気により急成長中の活発なコミュニティ
  • ツール支援:VS Code、Android Studioなど主要IDEで優れたサポート

開発環境のセットアップ

必要なもの

  1. Dart SDKまたはFlutter SDK(Flutterを使う場合)
  2. エディタ:VS Code、Android Studio、IntelliJ IDEAなど

セットアップ手順

方法1:Dart SDKのみをインストール

Windows:

# Chocolateyを使用
choco install dart-sdk

# または公式サイトからダウンロード
# https://dart.dev/get-dart

macOS:

# Homebrewを使用
brew tap dart-lang/dart
brew install dart

Linux:

# aptを使用(Ubuntu/Debian)
sudo apt update
sudo apt install dart

方法2:Flutter SDKをインストール(推奨)

Flutter SDKにはDartが含まれているため、Flutter開発を予定している場合はこちらが便利です。

  1. Flutter公式サイトからSDKをダウンロード
  2. 解凍して適切な場所に配置
  3. PATH環境変数に追加

インストール確認

ターミナルまたはコマンドプロンプトで以下を実行:

dart --version

バージョン情報が表示されれば成功です。

エディタのセットアップ

VS Codeの場合:

  1. VS Codeをインストール
  2. 拡張機能「Dart」をインストール
  3. 必要に応じて「Flutter」拡張機能もインストール

初めてのDartプログラム

Hello World

最もシンプルなDartプログラムを作成してみましょう。

hello.dart

void main() {
  print('Hello, Dart!');
}

実行方法

  1. 上記のコードをhello.dartという名前で保存
  2. ターミナルで以下のコマンドを実行:
dart run hello.dart

出力:

Hello, Dart!

もう少し詳しいプログラム

void main() {
  // 変数の宣言
  var name = 'Dart';
  int version = 3;
  
  // 出力
  print('Hello, $name!');
  print('現在のバージョン: $version');
  
  // 関数の呼び出し
  greet('世界');
}

// 関数の定義
void greet(String target) {
  print('こんにちは、$target!');
}

実行結果:

Hello, Dart!
現在のバージョン: 3
こんにちは、世界!

プログラムの説明

  • void main():プログラムのエントリーポイント(開始地点)
  • var:型推論による変数宣言
  • int:整数型の明示的な型宣言
  • print():コンソールに出力する関数
  • $変数名:文字列内で変数を展開する記法(文字列補間)
  • //:一行コメント
  • 関数定義戻り値の型 関数名(引数) { 処理 }

対話型実行(DartPad)

ブラウザでDartを試したい場合は、DartPadを使用できます。インストール不要で即座にDartコードを実行できる便利なツールです。


これでDartの基礎知識と開発環境の準備が整いました。次の章では、Dartの基本文法について詳しく学んでいきましょう!

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